同じ量の酒を飲んだ場合でも、ケロリとしている人もいる反面、メロメロに酔っ払う人もいます。この差は何に起因するのでしょうか?
「上戸」・「下戸」の語源
この言葉は、古く婚礼に用いる酒瓶の多少から出た語で、上戸は下戸の4倍の本数の酒を用いるとされ、すでに鎌倉時代に兼好法師によって著わされた「徒然草」にも見られます。酒に強い人(上戸)と酒に弱い人(下戸)の差は、肝臓によるアルコール分解能の個人差に基づいています。そこで肝臓におけるアルコールの分解(酸化)内容について考えてみましょう。
アルコールの分解能
アルコールは肝臓において、「アルコール→(ADH、MEOS)→アセトアルデヒド→(ALDH1型、ALDH2型)→酢酸」という過程で酸化分解されて、最終的には水と炭酸ガスとなって排泄され、この一連の酸化反応によってアルコール1グラム当たり7kcalのエネルギーが生成されます。以下、核反応の内容について説明します。
アルコールは、肝臓の「アルコール脱水素酵素(ADH)」により約80%が酸化されますが、残りの約20%は「小胞体アルコール酸化酵素系(MEOS)」や「過酸化酵素(カタラーゼ)」によって参加されてアセトアルデヒドを生じます。
1、ADH経路
この酵素は、人間に限らず微生物から高等生物にいたる大部分の生物に存在します。酒作りの主役を担う酵母は、酸化分解の逆経路、つまり「酢酸→アセトアルデヒド→アルコール」の経路を辿ってアルコールを生成します。なお、本酵素の作用(活性)は、女性ホルモンによって抑制されるので、女性のアルコール分解能はやや低いため飲酒ペースに留意する必要があります。
2、MEOS経路
この酵素は元来、人間にはわずかしか存在しませんが、飲酒の習慣によって後天的に生成される、すなわちアルコールによって誘導される酵素です。したがって、大酒家やアルコール依存者では、この酵素の活性が高まり、飲酒後の血液中のアルコールが焼失する速度も速くなります。ただし、この酵素はアルコールを酸化するだけでなく、薬物を解毒(酸化)する作用もあるので、睡眠剤や麻酔剤などの薬を分解してしまい、いわゆる”大酒飲みの薬効かず”という現象を誘発します。
酒に強い人と弱い人の差は、一つにはアルコールを分解(酸化)するADHやMEOSの活性の強弱に基づいています。
次回はアルコール分解過程の後半について説明します。 |