「おいしいね」のひと言を聞きたくて。 作り手として大切にしていること
目指すところは「お客さんにいちばん近い酒造会社」。毎日の晩酌に、そして特別なときにもそばに置いてもらえる、おいしくて安心できるお酒です。
そのために鷹正宗の作り手が考えている「大切なこと」を聞いてください。
「清掃」の本当の意味を知る
「え? 掃除?」、そんな声が聞こえてきそうですね。焼酎も清酒も造り方の根本は同じです。作り手は主役は「微生物」です。
焼酎も清酒も麹と原材料と水を発酵させてつくりますが、焼酎の場合、工程は次の四つ。
(1)原料処理=洗穀・浸漬
(2)製麹
(3)二段階の発酵
(4)蒸留
(3)の段階で、【米や麦のデンプンを糖分に変える「糖化」】と【その糖分を栄養にして酵母を増やし、かつアルコールと炭酸ガスに分解する「アルコール発酵」】という二つの作業が、同じタンク内で同時に進む「並行複発酵」を行います。
そこにいたるまでに、麹菌や酵素(糖化に必要)、酵母、また雑菌と戦ってくれるクエン酸などなど、たくさんの微生物が働いています。
私たち人間ができるのは、その微生物が住みやすく、活動しやすい環境をつくること。最適の環境をつくれば、微生物たちは力いっぱい応えてくれます。
たとえば、よい麹をつくるために洗穀・浸漬のときに吸水率を見極めること。
たとえば、もろみがむらなく発酵するように、デジタルだけの管理に頼らずに、毎日もろみを櫂棒を入れて感触を確かめ、香りをかいで状態をはかれるようになること。
そして、どの工程でも雑菌や野生酵母が入り込む余地のない衛生管理が肝心で、そのために大切なのが清掃です。私たちの酒づくりは清掃に始まり、清掃に終わるのです。
言ってしまえば、毎日がルーティン作業で、かっこよくもなく、地道なものばかり。
しかし、その作業ひとつひとつに意味がある。うまくいかないことがあれば原因を考え、次へ生かす。その経験を記録して、スタッフ全員が対応できるように情報を共有する。そうした“当たり前の仕事”に誇りをもって臨んでいます。
私たちは大手メーカーの委託製造を受けています。そのさまざまな厳しい審査をクリアして信頼を得ているのも、そうした日々の積み重ねがあるからだと自負しています。
最新の蒸留機を使いこなす
蒸留方法は、焼酎の味の方向性を左右する要因のひとつです。
一般的に、減圧蒸留では軽快な香りと飲み口の原酒が、常圧蒸留なら芳ばしい香りとコクのある原酒になるといわれます。私たちは最新の減圧・常圧蒸留兼用機を備え、異なるタイプを蒸留しています。
さらに、貯蔵期間や貯蔵方法、ブレンドの技で商品ごとの個性を出していきます。ブレンダーの確かな技術が受け継がれているのも、私たちの強みです。
そうして原材料の本来の特性ときれいさをあわせもつ焼酎ができあがります。
地の利に感謝する
蒸し、仕込み水、加水、アルコール度数の調整などなど。酒づくりにおいて水はとても大切です。
鷹正宗の焼酎を製造している叡醂酒造は、緑豊かな田主丸町。水縄山地とも呼ばれる耳納連山のふもとで、私たちはその伏流水をふんだんに使うことができます。
また、九州は麦の生産が盛んです。地元・久留米産の麦も使用し、地産地消の酒づくりを目指しています。
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鷹正宗は平成27年から酒類鑑評会への出品を再開し、複数の焼酎が福岡県国税局酒類鑑評会や福岡県酒造組合主催の酒類鑑評会で金賞を受賞しました。
特に市販酒を対象にした組合の鑑評会で、紙パック焼酎の「めちゃうま麦」が金賞だったことは、「お客様にいちばん近い酒」を目指す会社として喜ばしく、誇りに思います。
口にして思わず「おいしい」と言葉がこぼれ落ちるような、笑顔がはじけるような、そんなお酒を造ることができれば本望です。